みるきぃはうす

ダビスタ99の攻略や、かつてニコニコ生放送で開いていたBC「みるきぃ杯」の情報があります。レトロゲーム大会の話も多め。

ピンクカメハメハという競走馬の思い出

このタイトルの馬のことを皆さんはご存知だろうか? 競馬をずっと嗜んでいる人は「ああ、あの馬か」ってなるかも知れないし、スポーツには興味あるけど競馬はそこまで……って人ならキングカメハメハって馬は知ってるけどそれのまがい物って思うかも知れない。競馬の総合サイトnetkeibaのページには9戦2勝、中央の獲得賞金が1110万と書かれている。その数字だけで見れば他にもいくらでもいる馬の1頭。でも、私にとってはデビューから約1年、期待を込めて応援し続けた馬。ふと思い立ちそんな馬の思い出を纏めようかなと。

この記事ですが、ピンクカメハメハという馬を纏めたものではなく、あくまでも私の思い出をまとめたものであることに注意してください。そもそも私は競馬を本格的に見だしたのがそれこそこの馬がデビューした年からで、今でも素人を脱却してないのを自認しており競走馬を色々語れる知識も持ち合わせていませんので。色々調べたり想像を交えながら書いているので間違っている部分もあるかも知れませんがその辺はご容赦願います。

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検索で来られる人もいるかもなので少し説明を入れておきます。このブログの他記事を見てもらえば分かる通り私自身は以前ダービースタリオン99という競馬ゲーム(通称ダビスタ99)を嗜んでおり、ニコニコ生放送にてその大会を開いておりました。と言ってもレトロゲーム大会の1つとして参加したものが楽しかったので自分で大会開こうとなっただけで昔から競馬に詳しいわけでもなんでもなかったのですが。私の競馬知識といえば好きなプロ野球観戦のために購読していたスポーツ誌に踊るG1馬の名前ぐらいだったかな?

ですが競馬ゲームである以上、大会に参加してくれる人は同時に競馬好きもである人が多く、その方たちに付き合っていると自然と競馬関係の情報も耳に入るようになってきました。そんな中、気になったのが参加者の1人が企画していたペーパーオーナーゲーム、通称POGという遊び。以前からなんかやってるなとは思ってはいたのですが、よく聴くとただ一定のルールに沿った今年デビューの馬を数頭選んで、その馬達がダービーまでに稼いだ賞金の総合計で競うという至極単純なもの。これなら私も参加出来るかなと思い、大会はとりあえず混じって楽しめ精神な私は翌年の大会に参加を決意したのです。

ただ、馬の良し悪しなんて一切わからない私。ダビスタをやってるから良血にいい種牡馬つけてたらある程度は走るのはわかる。あとインブリードとアウトブリードの違い(欄外1)とか無駄に素人じゃない知識は持ってるけど正直活かせる気はしませんでした。でもやる限りはある程度勝てる可能性のある馬は選びたいと思い、自分なりに色々調べたのは覚えています。その中で新種牡馬から選びたいなと思って調べていたときにリオンディーズ産駒の中で一際目立ったのがこの「タバサトウショウの2018」だったのです。

選ぶに当たって母親の産駒の成績を調べていたのですが、その産駒の一覧の中にスイープトウショウという名前を見つけて「ん?」となりました。今でこそウマ娘に登場するわがまま魔法少女のイメージが強いですが、当時の新聞程度の知識しかない私にとっては名前は知ってるけどダビスタ99では見ない、でもだいぶ前に聞いたことはある名前でした。それもそのはず、ダビスタ99が世に出た4年後にデビューした馬なのだから。ただそれから更に15年以上経ってるのにその弟がまだデビュー前っておかしくないかと思って調べたところタバサトウショウの25歳の時の子供とわかってびっくり。ダビスタだと繁殖牝馬は25歳になる前にだいたい死んでるし、生きてても受胎能力が落ちてしまうので現実世界でこんな年齢まで種付けしてることに驚きを隠せませんでした。このぐらいの年齢になると産駒の能力にも影響出ないのか気になるし、何よりスイープトウショウ以外に目立った産駒といえばダートの重賞戦線で活躍したトウショウフリークぐらいでどうにも心もとない。そもそも新馬戦が始まろうかという時期になって名前が決まってないどころかオーナーすら不明。普通ならまず指名しないと思います。現に主催の人に「名前ついてないのは流石に……」と言われたのも覚えています。が、ど素人の私はここにロマンを求めてしまったのです。当時の自分のブログに寄ると「Mr. Prospector の血が入っていて、Northern Dancer のクロス1本だけっていうのは(スイープトウショウと)似てる部分があるのでそこまで変な選択じゃない」とちょっと知ったかなこと書いてるのが自分でも笑えます。

ちなみに日刊競馬POGという公式のPOG大会のサイトがあるのですが、2020-2021の指名馬ランキングでピンクカメハメハと検索しても名前が出てきません。私は参加したことがないの詳細はわからないのですが一番人気だったサトノレイナスの指名数が1769であるところから考えて1万人以上は参加してると思われる大会で指名者が0人であることが当時のこの馬の立ち位置を物語ります。

(欄外1)数世代前までに共通の祖先がいるかどうか。いた場合はインブリードと呼ばれその祖先の特徴が出やすくなると言われています。

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私達がPOGの指名で騒いでいた2020年6月。その頃にオーナーサイドでは動きがあったようです。オーナー側からすぐに走れる馬が欲しいと調教師の森秀行氏へ相談があり、そこで森氏が見つけてきたのがこのタバサトウショウの2018だったとのこと。高齢出産が毛嫌いされたのかセリに出すも売れず、新型コロナの影響で次に出す予定だったセリが中止になるなど色々あった結果、新馬戦の時期になっても馬主が決まらないままになっていたらしい。(欄外2) 森氏は以前の海外セリで母親が高齢だからと見送った馬がG1馬になった経験から馬さえ良ければ問題ないという考えの持ち主だったが、この時森氏が見つけていなかったら、またオーナーが相談を持ちかけていなかったらこの馬はどうなっていたのだろうか。

そもそもオーナーと森氏の関係もよくわからない部分がある。オーナーは木村久子氏だが、木村氏は大馬主ってわけではなく1、2頭だけ持ってその馬が引退したら次の馬を買うというスタイルのようで、それまで3頭所持していたようだが厩舎は森厩舎とは別の厩舎に預けている。ならなぜ急に森氏のところに相談に行ったのか。ピンクカメハメハ以前から森厩舎管理の馬は足にピンク色のバンデージが巻かれていたので、冠名からピンクが好きと想像する木村氏が目につけたのだろうかとか勝手に色々想像していたのだが、この記事を纏めるために改めて検索したところ全く違っていたようで、木村久子氏の夫でミキハウス社長木村皓一氏のインタビュー記事に答えが書かれていた。その記事によると元々夫婦共通の趣味として馬主をやっており馬によって登録をミキハウスミキハウスHKサービス)名義にしたり木村久子名義にしたりしていたようだが、気がつくと木村久子名義の馬がいなくなっており、馬主協会からこのままでは除名になると言われ妻が馬主でなくなるのはまずいと慌てて馬を探したらしい。なるほど、ミキハウス登録の過去の馬には確かに森厩舎管理の馬もいるので森氏に相談を持ちかけたのもわかるし、新馬戦も始まる時期に今年デビューする馬を探してたのも納得ですね。事実上木村夫妻所有の馬だったわけだ。

その馬には木村久子氏の冠名であるピンクに、父の父であるキングカメハメハからの後半部分であるカメハメハを足した「ピンクカメハメハ」という名前がつきました。元来こういう有名馬に似た馬名は申請が通らないことが多いのですがこの時は通ってしまったようで、この名前が後に競馬ファン界隈でちょっとした騒ぎを起こします。

(欄外2)2019年7月8日のセレクトセールで売り出されていたこと。その時の希望価格が1300万だったことまではわかっています。また、2020年5月中頃に1000万でネットオークションに出してたようでそのサイトも残っています。

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私がそれに気づいたのが2020年6月30日。毎日のように指名馬の掲示板を覗いていたら急にピンクカメハメハという名前が出てきて来てデビューすら出来ないのかなと思っていたのでびっくり。そしてその3週間後の7月19日に早速新馬戦を走る事となりました。まだ他の指名馬がデビューしてないのに名前どころかオーナーすら決まってなかったこの子がトップバッターというのも面白い話ですが、まあそんなに色々上手くいく訳がないと思いつつ、鞍上がレジェンド武豊であることもあってか3番人気に推されていたので淡い期待を寄せ観戦。

ただこの当時私は1日2回のチーム戦売りとしたとあるソシャゲを遊んでいて、このレースの時間がそのチーム戦の時間と丸かぶりしていたのでレースにかぶりつきという訳には行かなかったのです。よりによってその日は数ヶ月に1回のイベント戦の最中でいつもより激しい戦いとなったので特に手が離せず、残念ながら小さいスマホの画面で片目でチラ見程度で我慢するしかありませんでした。

そして始まった私のPOG初レース。ピンクカメハメハは大外の8枠9番だったが、スタートと同時にいいダッシュを見せハナを奪う。800m辺りで出遅れていた2番人気のゾディアックサインが一気に上がってきて先頭を譲るが半馬身差で追走し最終コーナーへ。このまま2頭の一騎打ちか、はたまた後続馬の差しが決まるのか。後続馬との差はそこまでなく、普通なら差されるのがオチの展開だったと思います。ところが逆に差をつけたのはピンクカメハメハの方。武騎手が鞭を使ってる様子はないのだがどんどん離れていく。そしてゴール板の前を駆け抜けた時には2着ゾディアックサインとの差は4馬身、1番人気だった3着ルミナスゲートとの差は7と1/2馬身もの差がついていました。

正直自分としては全てが上手く行き過ぎててどうなってるの?って感じでした。勝った実感が湧いてきたのはソシャゲのチーム戦が終わったあと、届いていたPOG仲間からのお祝いメッセージを見た頃かな。当時の自分のタイムラインを見ると喜々として返信していたのがわかります。

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その頃、Netkeibaの同馬の掲示板やTwitterはちょっとしたお祭りが開催されていました。先述した通りこの馬の名前は「冠名+父父の名前の一部」なのですが、名馬にして大種牡馬であるキングカメハメハに酷似したその名前が目を特別引いたようでキングカメハメハ産駒と勘違いする人が続出。また、略するとピンカメになるので同じピンカメの愛称を持っていた2007年のNHKマイルカップの覇者・ピンクカメオの子供と勘違いする人やそこからピンクカメオの馬主であった金子真人氏の所有馬であることを連想する人も現れました。

そしてその血統面も注目を浴びます。母親が25歳のときに出産した馬という部分は当然クローズアップされたのですが、父親のリオンディーズはこの子が産まれた時まだ5歳で20もの歳の差カップルであったことも話題となりました。実際、25歳以上での出産例はいくつかあるようですが、父親とのここまでの年齢差というのは調べても見つからない。ましてやその馬が新馬勝ちした例など世界でもあるのかどうかレベルの話である。

他にもネタは色々。姉の名前だけを聞いた人がスイープトウショウの子供と勘違いするパターンや、牡馬にしては438kgと小柄だったためピンクという名前も相まって牝馬と思い違いする人。ピンクの勝負服の騎手を乗せてピンク色の8枠出走だったのも面白かったようで、新馬戦を勝っただけの馬としては異常な情報量が飛び交います。その勢いは一時的にTwitterのトレンドに名前が入る程でした。元々全部知っていた私はそれらのメッセージをニヤニヤしながら追っかけていたのを思い出します。

ネタ的な情報以外も目を向けると、まず騎手の武豊氏から前向きで一生懸命走るとの評価が。某競馬サイトの2歳馬チェックでは10段階で★6つをつけて貰っていました。過去の情報を掘ってみるとこの数字はオープンクラスの馬という評価らしくそういう部分では少々物足りないのですが、前年のページを見てみると三冠馬コントレイルが同評価だったりするのでそこまで気にしなくてもいいのかなと。何より本文を読んでいると特に欠点がなくいいことばかり書いていたので。タイムも新馬戦にしては速い部類らしくこの時点では今後のレースに大きな期待を寄せていました。

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ただ現実はそこまで甘くない。次戦は1ヶ月半後の重賞・札幌2歳ステークスでここで勝てば朝日杯やホープフルステークスなどの2歳G1戦線への道がほぼ確約されるレース。同レースには後にG1を3勝する白毛牝馬ソダシに、1番人気に支持されこれまた後に重賞戦線を賑わせるバスラットレオンがいましたがそれに次ぐ3番人気。翌年のオークス勝馬ユーバーレーベンより高い評価となったが一つ気になることが。馬体重が前走から+20kgの458kg……。いや、馬の2歳はまだまだ成長期だし、元々牡馬にしてはかなり軽い部類なので体重が増える事自体はいいのだが、流石に短期間で増え過ぎなのではというのが素人なりの印象。ボクシングだと1階級上げるとそれに対応するのが難しいとよく聞くが、それと同じように新しい身体に対応するのに時間がかかるのではと思いました。その加減があったのか、同じ距離ながら走破タイムが前走より速い点からみて元々の実力なのかはわからないのですがスタートこそ勢いよく飛び出し先頭で走ったものの、残り600mの時点ではハナを奪われ、そのまま順位をどんどん落とし終わってみれば14頭中13位のブービーという結果でした。

陣営はあれがこの馬の本領でないと見たのか、1ヶ月後にまたもや重賞のサウジアラビアロイヤルカップに登録。200m短くなった1600mのレースだったがまたもや勢いよく先頭に出るも残り400mで捕まり最後は画面外に。終わってみれば10頭と比較的少頭数のレースで9着とまたもやブービー

その3週間後にはリステッド競走である萩ステークスに登録。レースレベルが下がって流石に大敗はしなかったものの同じように逃げては捕まっての8頭中の5着。次の秋明菊賞は1400mの1勝クラスのレースで、このレースは前半3ハロン33.8の激しい先手争いもあってか初めて頭を取らないレースとなったがここも最後伸び切らず7着に終わる。そして報知杯中京2歳ステークスと更に200m短くなった1200mでも結果は4着。14頭中のこの順位なので常に全力感のあるこの子には短距離があってるのかなとは思い始めるものの、重賞はおろかオープンのレースでも勝てない現状に流石にこの辺までの馬なのかなと言う印象が出てきました。

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しかし結果はともかくよく走らせるなと。7月のデビューから中京2歳ステークスまでほぼ1ヶ月間隔で走っている。POG指名してる側からすると何度もレースが見れるのは全く出ないよりはいい話なのだが、流石に間隔詰めすぎなんじゃないかなと。そう思いつつ1ヶ月半ほど経過した2021年1月29日。とんでもないニュースが流れ込んできました。

「ピンクカメハメハ、サウジダービーの招待を受諾」

寝耳に水とはまさにこのこと。元々POG指名の際に森厩舎と聞いた主催の人から海外レースに行く可能性はあるよとは聞いていたのですが、本当にそういう話が出てくるなんて全くの予想外。実際のところ去年新設されたばかりの同レースでは森厩舎のフルフラットが優勝しており、その辺あっての招待だと思うので元々可能性はそれなりにあったのだと思いますが当時はそこまで知らなかったので驚くと同時に笑えてくる部分もありました。ほぼネタ指名のロマン砲は一体どこに着弾するつもりなのだろうと。1着賞金は去年の48万米ドルからほぼ倍増の90万米ドル。日本円にして約9450万。前年末に行われたG1朝日杯の1着賞金が7000万であることから見てもいかに高額かが分かります。

とはいえ勝算があるのかというと正直首を傾げるところ。もちろん陣営は勝算ありで連れて行ってるのだとは思いますがここまでの戦績は新馬戦勝っただけの6戦1勝。しかもサウジダービーはダート1600mのレース。元々マイル帯を走ってたので短距離からそこに戻すのはまあ良いとして、問題は今まで1回もダートを走っていないということ。そもそも日本と中東のダート自体全然違うものなので走ってたところで大差ない話なのかもしれませんが、未知の馬場であることには変わりはない。まあ、結果はともあれデビューから応援してた馬が海外レースに出るというだけでも凄いこと。淡い期待を寄せつつ当日を迎えます。

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2021年2月20日。と言っても時差があるので日本時間では21日午前1時だったのですが、グリーンチャンネルの中継が始まる前に出走するとのことで、知り合いからyoutubeの生中継サイトを教えて貰い待機。鞍上にはこの年40歳になるベテラン騎手戸崎圭太の姿がありました。

実はレースが始まる少し前に騎手周りで色々あったようで、元々は戸崎騎手が乗る予定ではありませんでした。というのも、元々ピンクカメハメハにはジョエル・ロサリオという外国人騎手が騎乗する予定だったものの、当日になってこのレースの有力馬コワンに騎乗予定だったウンベルト・リスポリ騎手が航空機のキャンセルで入国できず。それ幸いと思ったのかロサリオ騎手はコワンに乗ることを選択、急にピンクカメハメハの鞍上がいなくなってしまったのです。先約があったのにドライな話かも知れませんが、元々コワンはアメリカの馬でロサリオ騎手もアメリカを拠点とする騎手なので自国の馬のピンチに駆けつけたと思えばそこまで酷い話ではないのかも知れません。とにかく鞍上不在。ここに現れた戸崎騎手も本来はピンクカメハメハに乗ることは出来ない騎手でした。このレースには元々ピンクカメハメハと同じ森厩舎が管理するフランスゴデイナという馬が出る予定で戸崎騎手はこの馬に騎乗予定だったのですが、同馬が発熱したために出走を回避。同日の他レースに騎乗予定があったので現場にはいたものの、このレースに関しては騎乗馬がいない状態だったのです。

戦績的にはこの場にいるのが不思議な馬と、本来この馬に乗ることはなかった騎手。役者?は揃いました。そして始まるレース。いつものように好スタートを決めたピンクカメハメハはハナこそ他馬に譲ったものの3番手でついていく。初のダートでも走りにくさは見せていない。そして直線に入り400mのラインを通り過ぎたところで徐々に先頭との差を詰めていきついに先頭に。ただ、後続も迫ってきておりこの時点では一瞬でも先頭に立ってくれたこと満足してる自分がいました。後はいつも通り落ちていくだけかなと。

だが落ちない。300m辺りから1馬身半ほど後ろにいる2頭との差がなぜか縮まらない。そうこうしてる間に100mのラインを通り過ぎる。そこに外から勢いよく迫ってくるコワンの姿が。一気に抜き去りそうな勢いだったが直前でいっぱいになったのか勢いが弱まり、追い抜かれるより先にゴール板を通り過ぎるピンクカメハメハ。

最初は信じられなすぎて実は別の馬と見間違えていたのではとか思いました。実況は興奮して色々言ってるけどアラビア語で全く何を言ってるのかわからない。しかし次の瞬間「ピーンカミハミハ!(そう聞こえた)」と連呼してるのが聞こえて勝ったのが間違いなくピンクカメハメハだということが分かりました。名前や出生などで色々ネタにされた馬が海外で大仕事をやってのけたのです。そして、馬に乗って近寄ってきた現地リポーターからのインタビューを受ける戸崎騎手。しかし通訳がいないしそもそも英語が喋れないのでサンキューやハッピーなどの簡単な単語で切り返す様は競馬ファンの格好のネタに。彼は自身だけでなく関わる者までネタ化させてしまうのだろうか。

このレース、レベルが低かったという声も散見していたので自分なりに調べてみました。2着に入ったコワンはここまで1勝ながらもG2で2着など安定した成績を見せており、3着のニュートレジャーはアイルランドのG3を勝ってきている。5着のソフトウィスパーはUAE2000ギニーの勝者で、4着のレベルスロマンスに至ってはこの時点では目立った成績は残せていなかったものの後にBCターフなどG1を3勝、イクイノックスが物凄いパフォーマンスを見せたドバイシーマクラシックでは2番人気に支持されていた。個人的にはこのレースのレベルが低かったとは思わない。

まあ、レースのレベルがどうであろうが彼が90万米ドル。当時の日本円にして約9450万円を稼いだのは間違いないこと。その時点で世代の賞金ランキング3位となり、当然私が参加してるPOGの順位もうなぎ登りになる……はずだったのですが、ここで私自身もネタに塗れます。実は大会のルールにはこういう記述がありました。

中央競馬地方競馬の合計賞金を集計』

集計に使っているNetkeibaは海外競馬の賞金が加算されないためこういうルールになっていたようですが、要するに海外競馬はいくら勝っても最初から0ポイントだったのです。まあ、レース前からわかっていたことだったのですが。ただ、実際にPOG期間中に海外に遠征して稼いでくる馬が出てきたことで翌年からはちゃんとポイントが入るようルールが改正されました。彼の活躍はこんな小さなところにも影響を与えたのです。

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さて一躍時の人ならぬ時の馬となったピンクカメハメハ。次戦は1ヶ月ちょっと後の3月27日、サウジアラビアのお隣アラブ首長国連邦UAEダービーに出走。1着賞金こそ43.5万ドルとサウジダービーに劣るものの、設立されて2年のサウジダービーとは違い20年の歴史があるレースで高いレベルが予想されました。実際ここではいつもの先行力は見せるも直線に入る前にジリジリと順位を下げ10着と惨敗、サウジダービーには出走できなかった僚馬フランスゴデイナにも先着を許す形となってしまいました。まあ、距離が1900mと300mも伸びたので常に全力感のあるピンクカメハメハには正直長すぎるなと言う印象。新馬戦を1800mで勝ってるとはいえレースのレベルも全然違いますからね。ここの負けは仕方ないかなと。

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そして帰国。常に1~2ヶ月のペースで走ってきた彼ですが、ここで少し間隔が開きます。次走は3ヶ月程空いた6月20日の3歳限定ダート戦ユニコーンステークス。久しぶりの日本の重賞ですが、海外では重賞馬クラスのパフォーマンスを見せたので再挑戦は当然の流れ。距離もサウジダービーと同じで左回りであるところも一緒。後は日本のダートに対応できるかどうか。

その6月20日は私にとっていつもと少し違う日曜日でした。普段は家で野球中継片目に知り合いのゲーム配信にコメントしたりTwitterのタイムラインを追ったりして過ごしているのですが、この日はボクシング井上尚弥の防衛戦の結果が耳に入らないようネット断ちをしていたのです。防衛戦は米国だったため時差の関係で午前に行われていたのですが、その時間の民放の生放送はなく夜に録画中継という形だったので。今どきネットを触っているとどこからでも結果が目に入る可能性があるのでなるべくそういうのを触らないよう注意。ただ、野球中継を眺めてるだけは寂しいので、ちょうど書きたい話があったのでブログの執筆をしながらネットが触れない時間をうまく使っていました。

そしてレースの時間が迫ります。ピンクカメハメハは16頭中11番人気。海外のレースを勝ったとはいえタイムが遅かったのが毛嫌いされたか。それとも前走の大敗が響いたか。ただ私にとってはもうその辺は関係ない話。元々POGという遊びのために選んだ馬で、この時点ではダービーも終わりポイントの集計期間は過ぎていましたが、とっくの昔に私にとってこの馬はゲームの駒ではなくただ応援するだけの対象となっていました。

戸崎騎手と同い年の北村宏司騎手を背にレースがスタートする。いつものようにダッシュを見せ前目につけるピンクカメハメハ。このレースは最初が芝のスタートだったが、ダートに入っても特に走りにくそうにしてる様子もなくそのままついていく。サウジダービーでは直前に降った雨が有利に働いたと聞くが、この日の重馬場も彼には有利に働くのか。そしてレースのカメラは後続の馬をズームアップし、ピンクカメハメハの姿はカメラの外へと消える。

それが元気に走る彼の姿を見た最後でした。その時、私は瞬間画面から目を離していたのを覚えています。野球中継に目をやったのか、それとは別の何かに気を取られたのか、そこまでは覚えていませんがとにかくその瞬間は見ていませんでした。なので実況が急に「落馬です!」と叫んだのが聞こえて慌てて画面に目を戻したのです。ですが画面を見てもどの馬が落馬したのか分からず、実況も把握してないのか落馬と繰り返すだけで名前を言わない。その間10秒ほど、どうにも嫌な予感がする。改めて実況が落馬があったのがピンクカメハメハだということを伝えたためこのレースの勝ちが無くなったのは理解したのだが、ただ騎手が落ちただけなら空馬が走っているはずだ。だが、その姿はどこにも見当たらない。どういうことだ……?

もう勝ち馬が誰とかはどうでもよく現状を把握する方向に。先述した通りTwitterは使えない。だが、Netkeibaのこの馬の掲示板なら競馬以外の書き込みはないだろうとそちらを見てみると大量の悲痛な書き込みが目に飛び込んできました。何度もリロードしてようやく掴んだのは、どうも内ラチに激突して転倒したということ。あと尻尾を上げて苦しそうにしてたから心臓系の問題ではという書き込みも。そしてパトロールビデオを見たって言う書き込みが出てきたので私もそちらを確認。そこには突然後ろ足が流れ急斜行し内ラチに激突するピンクカメハメハと、ふっ飛ばされて内ラチのさらに内側を転がる北村騎手の姿がありました。騎手ももちろん心配なのですが、これを見た時思ったのはピンクカメハメハの方は正直厳しいなと。ブルーシートという単語も見える中僅かな望みでリロードし続けると公式発表があったとのことでJRAのサイトを確認。記憶違いかも知れませんが発表の一文の最後に(死亡)と書いてたのを見てそこで元の執筆作業に戻ることにしました。

今思えばこの日はネット断ちしていてちょうどよかったのかも知れません。Twitterを見返すとボクシングを見終わった21時ぐらいからタイムラインに復帰しているのですが、冷静にツイート、貰った返信に対応とかしていたようです。もしいつもの日曜日を過ごしていたのならもっと悲痛なコメントを書き散らしていたかも知れないので。

不幸中の幸いと言っていいのかはわからないのですが、この落馬事故に他の馬が巻き込まれなかったことだけは良かったのかもしれません。内ラチ沿いを走っていたわけではなかったのですが内側に他馬はおらず、後ろの馬も避ける余裕がありました。(欄外3)もしそこに馬がいたのならば接触し纏めて転倒、後続の馬が更に巻き込まれる大事故になっていた可能性も。北村宏司騎手は右足骨折の大怪我を負ったものの約5ヶ月後には復帰、この記事を書いてる1ヶ月前には8年ぶりのG1勝利も果たしています。偶然か必然かは分からないのですが、とにかくそれ以上の被害が出なかったことだけは幸いだったのかなと。

(欄外3)なぜ内側が空いていたのか、専門誌記者の方が纏めてる記事がありました。勝手にリンク貼っていいのかわからないので貼りませんが、「ユニコーンSを振り返る」で検索してもらえると出てくると思うので興味あればそちらも御覧ください。

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死因はレース中に起こした心不全によるものでした。競馬の世界では稀に見られる現象ですが、その原因に関して憶測は立てれるものの素人の私が色々書くものではないと思うので避けておきます。

彼の競走馬としての活躍を書くのはここで終わりです。出生から色んな話のネタを振まいてくれた彼ですが、当たり前ですがこんなネタまでは欲しくなかったですね。ゲームでもこういうシーンは再現されていて故障発生するたびに泣かされたものですが、何も現実で応援してる馬までこうならんでもいいのにと。でも実際にこういうことがある世界なんだと改めて思い知らされました。

あれから3年近く経ち、同期の活躍馬も引退するものが増えてきました。もし生きていれば今頃彼はどういう成績を挙げていたのかと思うことがあります。ここからは素人考えを書き連ねるだけなのですが、まずユニコーンSで16頭中11番人気だったことから見るに世間の評価は「同世代限定のダートG3戦に置いてまあまず勝ち目はないだろう」程度の馬だったということなのでしょう。そしてその見立ては恐らく当たっているのだと思います。競馬の世界はタイムやら指数やら色々データ化されいて総合的に馬の能力を見ることができるので、大体のレースの結果を見ると多少上下はあっても上位人気は上位に、下位人気は下位に固まってるのが現状です。レース後森調教師は馬主の木村氏に「あのままの勢いでついて行けば優勝していた」と言ったようですが、それもあくまでも条件付きの話。実際勝ててたかというと私もまあいいとこ掲示板かなと言うのが本音です。

ただ、過去のレースを見ててもどうにも掴み切れない部分があります。勝利したのは函館右回りの芝1800mと、左回りのサウジのダート1600m。共通点はマイル帯ってことぐらいで後は真逆もいいところ。リオンディーズ産駒自体まだ最高齢が6歳で、自身も早期に故障引退した馬のため成長型の傾向が掴めておらずこれ以上成長が見込めないとも決めつけ難い。また、最終的には大敗しているものの、不良馬場だったサウジアラビアロイヤルカップでは最終直線まで良馬場同様に華麗に逃げており重馬場が苦手だったとも思えない。あれはその他のレースで見せていた最後スタミナが持たず下がっていったのと同じ負け方なのかなと。と思ったら、サウジダービーで見せたようになぜか最後まで持ってしまうこともある。ダートだったからなのか、それとも成長した姿だったのか……。

ごちゃごちゃ書いたところで結局のところよくわからないのですが、未知な部分が残っていた分何かが噛み合った時にまたサウジダービーの時のような激走を見せてくれたのではと思ってしまいます。抜群のスタートセンスという武器も持っていましたし、G1は高望みかもしれませんが忘れた頃に重賞を1つぐらい取ってくれたんじゃぐらいの妄想はしてもいいんじゃないかなと。妄想することしか叶わなかったのが残念ですが。

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流石に書くこともなくなってきたのでいい加減纏めます。

私は今も仲間内のPOGに参加して、指名した馬を応援するということを続けていますが、成績面ではもちろん、ピンクカメハメハのような記憶に残る・色々書きたくなるような馬はなかなか出てきませんね。まあ、自分なりに色々勉強はしてるので参加し続けていたらいつかはクラシックを取るような馬をデビューから応援できるのかも知れませんが、POGで上位に行きたいって言う欲が出てしまった今はネタ&ロマンの指名ってのはなかなか難しいし、仮に指名したところで活躍する可能性はほぼないと思っていいのかと。実際、一昨年はピンクカメハメハと同じ森厩舎の馬でこの時代に置いて母父シンボリルドルフという馬を指名したのですが未だに未勝利にとどまっているのが現状です。応援するだけならPOG指名馬じゃなくてもできるだろって言われそうですが、やっぱりそこに勝負が絡まないと応援にも熱が入らないもので。まあ、もうこんな馬に出会うことはないでしょうね。

先日競馬グッズを扱う店に寄らせてもらったのですが、ピンクカメハメハのグッズがないかと聞いたところないと言われました。実際ネット検索しても見つかりません。この手のグッズは重賞制覇などの肩書がない限り、シロニイやメロディーレーンみたいな特徴あって人気を集めた馬や最強の重賞未勝利馬とか言われるようなごく一部の馬しか作られないのが実状みたいなので仕方ないのかなと。一応、サウジダービーという高額賞金レースを制しているのですが、今でこそG3に格上げされていますが当時は格付けのないただのオープンのレースだったので。

まあ、グッズがないのなら自分で作ってしまえという人もいるかも知れませんが、私にはそんな器用さはないのが残念です。その代わりと言ってはなんですが、この無駄に長い文章でも残しておくとしましょう。みんなが忘れた頃に誰かがこの長文を見つけてこんな馬いたんだと思ってくれることを期待しつつ筆を置きます。